CROSS TALKアウル発達支援スタッフ 座談会



「子ども」に携わる仕事の中で、みなさんは療育という選択肢が最初からあったのですか?

私は最初から療育という選択肢がありました。

そうなんだ。どうして?
保育士だと保育園に就職するというのがやっぱり一般的じゃないですか。療育に興味を持ったのはどういったキッカケだったんですか?

もともと大学が社会福祉学科で、障害福祉を先行していたんですよね。周りにも障害を持っている子がいたりもしたので、自然と療育を志すようになっていました。
逆に井上さんはどうでした?

私はもともと看護師だったので、自分が療育の仕事に携わるとは全く思っていませんでした。ただ、子どもが小学生になって仕事に復帰しようとなった時に「どんな仕事をしようか?」と。
正職員として看護師を続けるのではなく、地域の保健センターで働くことを選んだんです。
そこでの仕事を9年近く続けていて、さらなるスキルアップを考え始めたタイミングと、発達障害が増えてきて広く認知されるようになった時期が重なって区の発達支援センターに転職をしました。そこが療育に携わるようになったキッカケですね。

井上さんが療育の道に進んだように、やっぱり療育に携わる方の中で一番多い資格は保育士さんですよね。もちろん他にも理学療法士や作業療法士、井上さんのように看護師の資格を持っている方もいますし、その人たちが現場で経験を積んで、児童発達支援管理責任者(以下、児発管)になるというキャリアが多いと思います。
やはり子どもに触れ合う時間が多いので保育を学んだ方は適性がある思いますが、保育士の勉強をしている人の中で療育を目指す人が多いか?と聞かれると多くはないのが正直な印象です。

多くはないか…(笑)

ちょうど保育士さん以外の資格の話が出たので求人についてお話すると、うちは保育士さんだけでなく理学療法士や作業療法士の方も募集しています。やはり色んな資格をお持ちの方がいらっしゃると園として提供できるものも広がりますしね。

そうですよね、偏りなく色々な方に来て欲しいです。

それに児発管を目指すだけではない、色々なキャリアもありますので。

私も児発管の資格は取りたいと思いつつ、現場が好きなので迷っています。やっぱり児発管になると「管理」や「運営」の仕事も増えてしまうのかな…というイメージがあって。子どもが好きなので、現場で子どもと接したい思いが強いです。

でも現場と児発管で持つべき視点が違ったりもすると思うので、経験やキャリアの中で資格を取るという選択ももちろんありますよね。

うんうん。

うちは規模が大きいわけではないので、児発管の資格を取って管理だけをやりたいと考える方には少しアンマッチかもしれません。こんなに正直に言っていいのかな(笑)
「子どもが好き」という気持ち以外に、どのような方が療育に向いているのでしょうか?

考えが偏らない人、「これが正しい!」と固執しない方が向いていると思いますし、一緒に働く際もチームとしてやって行きやすいのかなと思います。

私もそう思います。人の意見を尊重する、人の意見を聞き入れる懐の深さがある人は向いているのではないでしょうか?意見を否定せずに、お互いに意見を出し合って、その中で折り合いをつけて目標に向かって進んでいける人。私としてはそんな風に思っています。

あとは、すぐに怒らない人。
子どもがわーっとなっていても、そこには必ず理由があるはずなんです。その時に言うことを聞かせるのではなく、理由を追求していける人は向いていると思うんですがどうでしょう?

それにプラスして、想像力が豊かな人も向いているのかな。
やっぱり子どもの行動って、僕たちが想像もつかない理由で起きていたりするので。「なんでだろう?」と色々な理由や可能性を考えられる人は向いているかもしれませんね。

実際に私たちもプログラムが終わったあと、全員で「今日のあの子の行動はこうだったよね」と議論しますよね。

そうだね。
そこで、それぞれの捉え方を話し合って、次に向けた目標を立てて、次のプログラムの時にまた少し修正して…。これの繰り返しだね。

子どものコンディションも毎回同じではないので、同じ課題でも先週はできて今週はできなかったりしますからね。

その日にお昼寝していないことが、あとでわかったり。

そうした些細なことでも全然子どもの様子が変わるので、色々な想像力を働かせながら子どもの行動を見るようにしています。

こうして話すと大変なように聞こえるかもしれませんが、面白いですよね。

面白いです。
それはどういった点が面白いのでしょう?

療育は個別課題と集団課題があるんです。
個別課題のときに「この子はこのくらいできるだろう」と自分が仮説を立てるのですが、その際に「ここまでできて欲しい」と言う自分の願望がちょっと入ってしまうことがあるんですよね。
そんな時にちょっと子どもの体調が悪くてできなかったりすると、「あの時、私がもっとこうしてれば違ったかも」と振り返りますし、そうした試行錯誤をしながら子どもと一緒に進んでいくことが面白いですね。

あぁ~、そうかも。

課題がクリアできなくても、悩んで、またチームで話し合ったりして次に進んでいく。これはありがたい環境ですし、仕事をやっていてすごく楽しいです。

正解をすぐに求める世の中ですけど、人間の子ども相手なので当然僕たちも失敗はあります。
さっきの話ではないですが、そんな中で試行錯誤することを楽しいと思える人は向いているのかもしれません。
先週できなかったことが、今週はできると正解だと思ってしまいますが、来週はまたできないかもしれない。そんな風に失敗を繰り返しながら、ゆっくり進んでいくものなので一つの正解はないですしね。

そうだと思います。

僕が親御さんに必ず最初に話すのは、「子どもは放っておいても必ず成長します。でも行きつ戻りつ、少しずつです」と言うこと。うちのプログラムを受講すると一気に成長します、と言うものではないので。
やっぱり親御さんも生きづらさを感じておられるでしょうし、その生きづらさが何かをこちらも感じ取ってあげて、少しずつでも改善してあげられたら良いのかなと思います。
「発達障害を治す」と言うものではないので。

同じ子どもの行動を見ていても、私たちと親御さんで意見が割れることも当然あります。

これは正直に言っていいと思うんですが、親御さんは色眼鏡をつけているじゃないですか?それは当然なことなんです。親御さんは子どもたちの親で、僕らは第三者。違う視点で、親御さんがどうしても色眼鏡で見てしまう行動を、僕らは少しこちら側に引き戻すようなイメージですよね。

深くうなづく。

一方ですごく冷静に見ている親御さんもいらっしゃるんです。それはそれでどうなのかな?と思っていて。

冷たく「座りなさい」とか子どもに言っちゃう方もいらっしゃいますもんね。

子どもを色眼鏡で見ることは正しい親の愛で、親は子どもによって絶対的な安全基地であるべきだと思うんです。そこで親まで第三者的な目線を持ってしまうと、子どもが生きづらくなってしまう。だからこそ、親御さんはうんと色眼鏡で子どもを見て、僕たちに第三者的な目線を求めてくれる関係性が作れると良いですよね。
「アウル宮前 発達支援教室」がそんな存在であるために、どのようなことを心がけていますか?

親御さんの想いを、私たちが言葉にすると言うことですかね。そうすることで、私たち発信で「あなたは今、そう考えているんですね」というのを確認することが大切だと考えています。私たちがお子さんと親御さんどちらともに伴走します、ということがそれによって伝わるのかなと。課題に感じることが親御さんと私たちとで違ったり、本当に課題だと考えていることをこちらに伝えてくれないこともあります。ですので、日々プログラムの様子は報告しながら、親御さんに伝えるタイミングを待っている、見計らっているというイメージです。

うちに来ている時間はほんとわずかで、それ以外の家や保育園での様子などをヒアリングすることも大切ですよね。必要に応じて保育園の先生とも連携しながら、お子様の行動の認識に齟齬が出ないようにすることも大切だと思います。

そういう意味では、児発管のように俯瞰で見る能力は改めて大切ですね。

それとやっぱり想像力とコミュニケーション力かな。お子様の行動を見守ることもそうだし、親御さんにどう伝えるかも大切ですから。

こういう話をすると求められるものが高いと思われるかもしれないですけど、興味があればぜひ応募して欲しいです。何せ「なりたい!」と思うひとが足りてないと思っているので(笑)

応募しようと思っていただく時点で志はあると思いますので、それだけで十分に資質は満たしていると思います。
